「Unknown To The Unknownはレーベルだけをやっているわけじゃない」とDJ HausことRupert Coganは語る。「Tシャツを作ってもいいし、イベントをしてもいい。ひとつのことに拘る理由なんてないね」

Unknown To The Unknown（UTTU）の業務は多岐に渡る。レコードレーベルはもちろんのこと、YouTube チャンネルやポータルウェブサイトの運営、中古レコードの販売も手掛けている。UTTUからはLegowelt、Marcus Mixx、DJ Stingray、Photonz、DJ Octopusらのレコードが次々と発表されているが、それぞれの作品を繋ぐ明確な要素は存在しない。仮にUTTUを特徴付けるものが存在するならば、それはユーモアだろう。Coganは実におかしな男だ。曇り空が広がっていたある日の午後、ノースロンドンにある彼の自宅付近でトルコ料理を一緒に食べたとき、彼は常に笑っていた。父親のように落ち着き堂々と振る舞う彼は、発言を終えるたびに大声を立てて笑い、時には話している最中でも吹き出していた。それは言い換えるなら、真面目に不真面目なレーベルを運営する人に相応しい、期待通りのキャラクターだった。

しばしば格式や神秘性がいたずらに重んじられるシーンにおいて、UTTUは異彩を放っている。同レーベルは作品を矢継ぎ早にリリースし、通常、プロモーションを一切行わない。あまりにもハイペースであるため、リスナーが全作品をフォローしきれないこともある。突如、レコードが発表されることもあれば、フリーダウンロードでEPが配信されたり、ひっそりとサブレーベルが立ち上げられたりすることもある。どのリリースにも鮮やかで奇抜なアートワークを施す同レーベルのアプローチや世界観はその音楽性と一致しており、エレクトロ、シカゴハウス、テクノ、そして、UKガラージにまで及ぶロウでジャッキンなサウンドが万華鏡のごとく打ち出されている。しかし、慌ただしく取り止めのない運営をしているにもかかわらず、UTTUはダンスミュージック界で間違いなく影響力のある重要レーベルになっている。

現在のCoganは日中、エンターテイメント業界でPRとして働いているが、ダンスミュージックと関わるようになったのは、Benjamin Keenと共にHot Cityというコンビでバウンシーなハウスやガラージを制作していた2000年代半ばのことだ。時に甘美で時に鋭利な作品を制作していたHot Cityを経て、Coganは最終的に個別で様々な活動をしていくことを意識するようになった。そのひとつがUTTUだ。

Unknown To The Unknownという名前は様々なことに使われてきた。最初、UTTUは彼がDJ StingrayやDopplereffektと2011年に行ったパーティーの名前だった。デトロイトでダークエレクトロを制作しているアーティストたちに相応しい不気味な響きがこの名前にはあるとCoganは思っていたそうだ。パーティー終了後もUTTUという名前を忘れることができなかった彼はレコーディング名義として使用し、楽曲を発表するようになった。実を言うと、UTTUのリリース第一弾がアートワークと共にデジタル限定で発表される前、彼はその楽曲がプレイされたラジオ番組をリッピングしてYouTubeのチャンネルにアップしていた。

このYouTubeのチャンネルこそがUTTUの始まりであり、レーベルの方向性が形成された場所だった。当初Coganは、昔のレコードをリッピングしたものなど、自分が好きな音楽を気軽に集める場所として同チャンネルを使おうと考えていた。YouTubeで彼が気に入っていたのは音楽と一緒に映像や画像をアップできる点だ。Rashad & SpinnからKMA Productionsまで、同チャンネルにアップされた音楽はCoganの幅広いテイストを反映していた。彼をフォローする人の数は増え、MumdanceやSlackkといった友人たちが送ってくる未発表曲をCoganはエクスクルーシブでアップするようになった。そして、誰もサインを交わさない楽曲が並ぶ非公式なプラットフォームへとYouTube自体も変化した。

UTTUのファーストEPは鮮烈なものだった。ひとつのスタイルに捕らわれない2ステップサウンドを何年も構築してきた彼がテクノからの影響を打ち出したのだ。そしてDJ Stingrayの壮大なリミックス”Assassin”により同レーベルの自由奔放なスタイルが打ち立てられ、バンギンでありながらスマートなダンストラックが大袈裟なアートワークと共に届けられるようになった。UTTUの存在が人々に広まるまで、それほど時間はかからなかった。ファーストEPを耳にしたJackmasterは当時働いていたRubadub（グラスゴーでレコードから音楽機材までを扱う名店）でヴァイナルのディストリビューションを行いたいと同レーベルに提案した。

続く数作品でCoganはロウなサウンドへの興味を打ち出した。中でも特に大胆な作品を手掛けたのはシカゴハウスのベテランMarcus Mixxだったが、その内容はいつものMixxの作風とは異なるものだった。UTTUにとってMixxは打ってつけのアーティストと言えるかもしれない。Coganと同様、彼も密かに自分の興味を掘り下げてきた人物であり、少し変わった素晴らしいユーモアの持ち主だからだ。現在においても同レーベル屈指の傑作であり続けているMixxのUTTUデビュー作には荒削りで簡素なトラック2曲が収められている。”Use Your Mouth 2 Love Me (Teeth Mix)”というトラックタイトルから思い浮かぶのは、あのサウンドを置いて他にないだろう。さらにMixxはいい意味で低予算の映像を作ってトラックに組み合わせた。彼は長らく映像編集を趣味にしており、その点でもYouTubeを好むCoganと相性がよかった。StingrayがUTTUを有名にしたとすれば、Mixxはその地位を盤石なものにしたと言える。

その後、CoganはMixxの友人であるAlias Gの音楽もリリースした（彼はシカゴで理容室を運営しながら、トリッピーでブっとんだハウスを制作していた）。初期リリースには他にもニューヨークのDubbel Dutch、ベースラインのプロデューサーDJ Q、Boxedを始動する前のSlackkたちが含まれている。ところが、Coganの矢継ぎ早な運営アプローチは、慎重にじっくりと動くヴァイナル市場と次第に衝突するようになった。2011年のSlackkによるEP「Polar Bear」は初期リリースの中でも特に素晴らしく意欲的な内容だったが、ハウスの作品が続いた後でグライムの影響を取り入れた同EPをリリースすることにRubadubは難色を示したのだ。

彼は次のように語る。「俺がやりたいと思っていてもRubadubがヴァイナルでやりたがらないものが山ほどあったよ。あいつらはベースラインものなんか売れないと思っていたからね。『なんで普通のレーベルと同じことをやらなきゃいけないの？なんでプロモーションを考えたり、リリースプランに2か月もかけたりしなきゃいけないの？曲をもらってYouTubeにアップするだけでいいんじゃないの？』って思ったよ。DJ Q、Slackk、Spookyたちから曲を貰っていてさ、『この曲リリースしないの？なら俺がいい感じの映像を作るし、友達にヤバいデザインを仕上げてもらって、Boomkat（マンチェスターにあるレコード店）のデジタルで売るよ』って感じでやり取りしていた」

多様なプロデューサーの音源をリリースする中、Coganは数多くのDJブッキングを受けるようになった。また彼はCloneやCrème Organizationといったレーベルから自身のEPを発表していた。クラブやスタジオで過ごす時間が多くなるにつれ、Coganはストレートなハウスを好むようになり、単に自分が好きな音楽ではなく、自分がクラブでプレイするレコードを発表するレーベルとしてUTTUを考えるようになった。

彼は次のように語る。「もし俺がDJでプレイしなそうなら、レーベルからリリースはしないって決めたんだ。そう考えていたら『いつもプレイしているトラックを作っている人と一緒にやればいいんじゃない？』って思うようになった。Willie BurnsやLegoweltとか、多くの人に連絡してみたら、みんなもノリ気になってくれたんだ。俺がそういうサウンドを扱うようになってから、物事が調子よく進みだした。Locklead & Wouter Sっていうユトレヒトのやつらや、SlapFunkのNelson Yoghってやつと知り合ったんだけど、そいつらがディープハウスみたいな素晴らしい音楽を作っていてさ。ディープなんだけど、すごくジャッキンでJeremy UndergroundやLauerみたいな感じだったんだ。『うわぁ、すげえな』って思ったよ」

ヴァイナルを扱うUTTUをメインレーベルとして効率よく運営するようになったCoganだったが、ひとつのレーベルがリリースするには多すぎる数の音源が引き続き集まっていた。それに対する彼の回答は新たにレーベルを立ち上げることだった。2013年、Coganは自ら生み出した傑作”Thug Houz Anthem”と共にHot Haus Recsを始動した。この新レーベルは、Palace、Chaos In The CBD、Photonzらによるダンスフロア直系のサウンドに限定したプラットフォームとなり、対するUTTUはより奇抜な音楽を扱うようになった。UTTUの数作品を手掛けたLegoweltは今ではレーベルを代表するアーティストだ。

その一方でCoganは音楽の無料提供を再開し、Boomkatを離れて、フリーダウンロードモデルに路線変更した。業界の友人やウェブサイト、そして人気ブログの助けを得ながら、彼は自身のウェブサイトを通じて音楽配信を行うことができた。Coganにとって音楽を聞いてもらうことはヴァイナルを売ることと同じく重要だ。リリースフォーマットの形態よりも音楽そのものが大切なのであり、その姿勢はUTTUがまだYouTubeチャンネルに過ぎなかった時期から変わっていない。

彼は次のように語る。「フリーダウンロードにするよりもヴァイナルでリリースするほうがいいのはなぜかって？そりゃあ、レコード盤になるからだよ。でもそっちの方がいいとは限らないよ。俺たちのダウンロードリリースのデザインはすごくかっこいいからね。音楽はヴァイナルの方が見栄えするから、という理由でヴァイナルにするんじゃなくて、ヴァイナルというフォーマットに適している音楽だからヴァイナルにする、っていう考えに変えていきたいね」

フリーダウンロードの作品をしっかりと扱うという考えは、UTTUの最新プロジェクトでも如実に表れている。そのプロジェクトとは、レコードレーベル、中古レコード店、MP3の配信拠点、そして、ブログとして機能するポータルサイトだ。現在、同サイトの運営は円滑に進んでおり、ウェブコンテンツと共にレコードが次々とアップされ、そのすべてにヴァイナルと同じ魅力的なデザインとパッケージングが施されている。

「音楽業界でそれなりに長く働いてきたし、どんなふうに物事が動いているのか分かっている」とCoganは語る。「レコード1枚をリリースするのにそんなに時間をかけなくてもいいんだ。アートワークとかっこいいトラックを準備して送り出すだけさ。できることはそれくらいだよ。リリースすることが大変だとは思わない。リリースに何が必要なのかっていう仕組みを理解しているからね。これは趣味みたいなものなんだ。俺は音楽でキャリアを築いていこうとはしていない。もしキャリアを築くなら、今みたいなことはしない。自分の好きな音楽を扱うんじゃなく、ドラム&ベースとか何か他の音楽を扱っていると思う。UTTUは単に自分が楽しむためのプロジェクトなんだ。ヤバいやつと知り合ってヤバいことをする。それだけさ」

現在、Coganは世界を巡ったり、Rinse FMでウィークリーショウを担当したりするなど、少なくとも週に1度はDJをしている。現在に至るまで、彼は適度な運営方針と口コミを通じてUTTUを多岐に渡る音楽拠点へと変化させてきた。彼がレーベル運営に資金を注ぎ込めるのは日中の仕事のおかげだ。そして彼は日中の仕事を制約としてではなく利点として捉えている。

「音楽をあてにして家賃を払うようにはなりたくない」とCoganは語る。「取り決めを特に作らず、できるだけ楽しくやっていこうとしている。ブッキングは1本入るだけで十分だ。そうすれば音楽をプレイした後、帰宅して子供と遊べるだろ。ブッキングを3本受けて、ボロボロの状態で月曜の朝に仕事へ戻っていたら、一緒に仕事をしている人たちや仕事そのものを嫌いになってしまうよ。俺はすべてを適度に保とうと思っている。みんなは『どうやってあれだけの数をリリースしているの？』って聞いてくるけど、俺からしてみれば『1枚のレコードをリリースするのに、どうすれば6か月もかかるの？』って感じだよ」

UTTUのアプローチとしてもうひとつ挙げられるのは、大抵の場合、一緒に仕事をしている人たちとCoganが友人関係にあるという点だ。彼がこれまでに関係を築いてきたレーベルアーティストは、リリースの進行に対して同様にリラックスした態度で臨んでいる人たちだ。Coganは次のように語る。「一度、マネージャー連中とやり取りしていて嫌な思いをしたことがあるよ。『このシングルの宣伝計画はどのようになっていますか？』って言ってくるんだ。いやいや、ちょっと待てよ。俺は楽しみたいだけなんだよね」

「真面目過ぎないレーベルだから、俺はUTTUを気に入っている」とメールで語るのはLegoweltことDanny Wolfersだ。「レーベルは無邪気で、新鮮で、カラフルで、純粋で、多様なんだ。Rupertはとても伸び伸びとしているし、変に理屈っぽくなく、行動で示す明快なタイプだ。俺が不真面目だって言っているんじゃない。俺は音楽にすごく真剣だよ。でも真面目になり過ぎないことがレーベルにとって大事なんだ」

Coganは次のように語る。「みんなは俺のやり方を気に入ってくれているし、自分でも気に入っている。誰かに気に入ってもらえなくても、俺は俺でやっていくだけだ。YouTubeで200回しか視聴されないかもしれないし、今とは違う状況になっているかもしれない。そんなことは本当にどうでもいいんだ。ただ楽しむだけさ」

Unknown To The Unknown LOTM mix
UTTUの幅広さを見事に表現したジャッキン・ミックス。最近と今後のリリースからトラックを厳選。

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Filesize: 200.4 MB
Length: 1:23:30

Baba Stiltz - Cherry
Igor Tripura - Dwams (Lauer Remix)
Deadboy - R U 4 Me ?
GNORK Presents DJ SHARK - Space Beach
Legowelt - Sampling Winter
Steve Murphy - Blood Cake 909
Mak & Pasteman - T2000
Innershades - A World That Matters
Mall Grab - I’ve Always Liked Grime
Stephen B.C - Functionz
Mall Grab - Menace II Society
De Sluwe Vos - Insert Track Title Here
DJ Octopus - Throne Keen
Chambray - Evenue
VRRS - Took My Life On The Dancefloor
Steve Murphy - Italo Luv
LA-4A - I Feel Lit (Alden Tyrell Remix)
Locklead - Deepcore
Legowelt - Institute Of The Overwind (Photonz Remix)
DJ Haus - Feelin’ Reel
De Sluwe Vos - Insert Track Title Here (Person Of Interest Remix)
Igor Tripura - Dwams